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第011回『むかし話・ステレオ録音の感動』

むかし話をするようになるとトシを取った証拠だと言いますが、ふと思い出したことがあるので今回書いちゃいます。まあ、6月は私の誕生日もあってで、また加齢しましたからちょうどいいかと。

さて時をさかのぼること30年前・・・って、書き出しで自分がビックリした。ええ!あれは30年も前の話なのかよぉ、って。

1973年。中学生だった私は親にねだりにねだって、SONYのTC-2100Aというカセットテープレコーダーを買ってもらいました。たしか当時の値段で3万円ぐらいだったと記憶しています。なぜこのテレコが欲しかったかと言うと、ステレオで録音できる一番安いマシンだったからです。しかも単二電池4本で、2時間の録音ができました。まだカセットデンスケは登場していなかったはずですから、当時としてはかなり珍しいスペックだったと思います。

そのテレコには内蔵マイクがあったので、一年ぐらいはそれで録音を楽しんでいました。きれいな音で録音できたのですが、モノラルなので何か物足りなさを感じる日々。そして、ついに翌年。我慢できなくなって、ECM-99というワンポイントステレオマイクを買いました。あんまり嬉しくて、買った日が1974年7月13日だって覚えてますよ。7500円でした。(貨幣価値が違うので、7500円だって中学生にはなかなか買えないシロモノでした。)

そして、生まれて初めてステレオ生録音なるものをやったですよ。道の真ん中で録音ボタンを押して、ヘッドフォンに流れてきた周囲の雑踏を聞いた時、息が止まりそうになりました。大げさじゃなくて、後にも先にもあの衝撃は忘れられません。みなさんはステレオ音声を聞き慣れていますから何とも思わないかもしれませんが、未知のものに出会ってしまったショックというのはものすごいですよ。「この広がりは何?何?」「まさに生のような音。この機械で録音できるのか!」って。そのまま肩からテレコを下げて、マイクを前へ突きだしたままのスタイルで、町内を歩き回りました。あの時からすでに、怪しい行動をしていたってことですな。

・・・でもねぇ、その時のテープを今になって聞き直すと、大したことないんですよ。というか、かなり音質悪かったですね。広がりもそれほどではないし・・・。その後、何台もテレコを買い、マイクも買いましたが、あの時の感動はもうありませんでした。慣れちゃったんでしょうね。そしてデジタルな現在。飛び抜けた高音質の録音が手軽にできる時代。だけど心の底から感動するようなことには、ますます出会いそうにありません。

その後、徹底的に使い込んだTC-2100Aは、蓋が割れ、全身キズキズになり、プッシュレバースイッチが折れ、ついにはモーターが止まって完全に昇天しました。引っ越しの時に捨ててしまいましたが、今思えば記念に残しておけば良かったかも・・・。

ん?まてよ。我が青春の日々を語っているのに、テーマは女の子じゃなくてテレコの想い出かい!・・・わ、私の青春って、いったい・・・。

ということで、また次回。

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