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第004回『波形編集ソフトの憂鬱』

サウンドを編集するためのソフトには、波形編集ソフトとマルチトラック編集ソフトの2種類があります。簡単に説明すると前者は、録音したセリフデータからノイズやNG部分をカットして素材を作るもの。後者はその素材・・・セリフ、音楽、効果音のデータを読み込んで、重ねるためのソフトです。

さて今回のタイトルは「波形編集ソフトの憂鬱」。何が憂鬱なのかと言いますと、その表示能力と処理速度なんですよ。

まずは表示能力について。波形編集ソフトは素材を整えるために使います。だから、びみょ~な部分まで見えてくれないと困るわけです。ちょっと下の図を見て下さい。おわかりになるように、ソフトによって表示能力が全く異なります。リップノイズなどは、見えなければ削除できませんから、ウチで最も微細な編集ができるソフトは、Sound DesignerIIだということになります。(ProToolsはマルチトラック編集ソフトなのでちょっと除外。)

ところが、ところがです。お頼みのSound DesignerIIも、「処理速度」という問題で憂鬱になってしまいます。こやつは何か編集を行うと、その位置から最後までのデータをいちいち書き換える・・・「ファイルに保存し直す」動作をするのです。たぶんみなさんは、「それがいったいどーしたの?」って思いますよね。それはこーゆーことです。例えば1分の音声ファイルから、リップノイズを削除したとします。書き換えは2~3秒で終わります。次に10分のファイルで同じことをやってみると、5秒かかったとします。では100分のファイルでは1分。

「そんな100分のファイルなんか通常は編集しないでしょ。」・・・と、思います?なんのなんの。ゲーム音声の仕事では、数時間~十数時間なんてのざらですよ。ま、仮に100分のファイルだとすると、一ヶ所削除するたびに1分待たされるわけです。リップのイズの削除なんて、ものによっては何千回も行いますから、待ち時間が膨大になるため使えないという結論になるわけです。

さてそんなこんなでいろいろ試した結果、大ざっぱにNGカットしたり、ノイズを切り取る作業にはBIAS社のPEAKを使用しています。このソフトは、どんなに長いファイルを編集しても、カットした瞬間に作業が完了するというスグレモノです。このワザができるマック用のソフトは、他にありません。ノイズの見え方は今ひとつなんですが、処理速度の速さには代えられません。

さあこれで大団円!かと思いきや、PEAKには最大の欠点が・・・。保存するまで、編集結果がファイルに反映されないのであります。つまり、マックで有名なフリーズという現象が起きると、そこまでの編集は水泡に帰すのでした。これがまた、大きなファイルを扱っていると、不安定になりやすくて・・・。あともうちょっとで終わりだ・・・ってところで、フリーズ。ひどいときは、編集が終わって保存している最中にフリーズ。うんぎゃ~!

まだまだ憂鬱は続くのでありました。

ということで、また次回。
■波形編集ソフトの縦方向拡大表示能力比較:(横方向の拡大率は統一していません。)

図1:Sound DesignerIIで表示した基本波形


図2:Sound DesignerIIで縦方向に最大表示した場合
図1で見えなかったノイズがここまで大きくなります。


図3:BIAS PEAKで縦方向に最大表示した場合
一応ノイズが見えますが、かなり小さいです。


図4:Cubaseの波形エディットモードで縦方向に最大表示した場合
全くノイズが見えません。ノイズカット不可能。


図5:ProToolsで縦方向に最大表示した場合
さすがProTools。表示能力は抜群です。

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