Walking in Space 2では、効果音が必要な場合は市販の効果音集をよく利用しています。その理由は、はっきり言って作るのが大変だからです。業界では「音効さん」と言って、効果音だけを作る専門家がいるくらいですから、餅は餅屋に任せておくのが一番だという考えでいます。しかし時として、効果音集ではまかなえないような音が必要になることがあります。今回は効果音制作のエピソードをご紹介しましょう。 Virtual Audio Stationのドラマ「全国放浪戦記・水戸ちゃん」に「やしちこ」というキャラクターが登場し、こやつが風車をとお~~~~くへ飛ばします。もちろん風車がと~~~~くへ飛ぶ音なんて効果音集にはありませんから、新たに作成することになります。 まず完成した風車が飛ぶ音を聞いてください。(効果音1)元がどんな音から作られているかわかりますか?実は「釣り竿のリールを巻き上げる音」をベースにして、音の高さと速度を調整して作りました。原音はこれです。(効果音2) 次はとある作品のために作った「先生が黒板に直で字を書いている」音です。(効果音3)意外かもしれませんが、黒板にチョークで文字を書く音というのは、ほとんど市販品にはありません。よってこれも新たに作ることになるのですが、本当にどこかの教室まで行って録音するのも大変だし、例え小さい黒板であってもこのためだけに購入するのはもったいない。 こういうとき、身近なもので同じ様な音が出ないかあらゆる可能性を試してみます。その結果、黒板の音は「1円玉を使って、わが家のテレビの台の天板を、チョークで文字を書くように叩いたりこすったりする」ことで出しました。この1円玉ってのがミソです。他の硬貨ではチョークの音にはならないんですよねぇ。効果音というのは、「らしく」聞こえれば何でもアリで、不思議なことにウソの方が本当らしく聞こえたりする不思議な世界なのです。 でもウソばかりじゃないですよ。直球勝負の効果音も作ります。たとえば、「うどんをすする音」(効果音4)とか「プルタップを開ける音」(効果音5)です。うどん食いはおやつを食べた後にも関わらず、テスト録音のやりすぎで胃もたれを起こしたし、プルタップは「いいか、一発で録音OKにならないと、缶ジュース120円がパーになる」みたいな、かなり無意味な緊張を強いられた記憶があります。 そうかと思うと、ウソとホントの中間みたいな効果音もあります。この「ドアを開ける音」を聞いてください(効果音6)。Walking in Space2の作品の中で、最もよく使われているお馴染みの音なんですが、何かおかしいと思いませんか? ほとんどの人は全く疑問を持たずに、ドアが開いた音だと思いますよね?ところが、ところがですね、よく考えるとわかるんですが、ドアが開くときは音なんかしません。せいぜいドアノブを回す音と、空くときにドアの蝶番がきしむ音、それからシリンダー錠が動く小さなカチャっという音がする程度です。 だからこういう派手にガッタンという音を立てて開くドアというのは、構造的に存在しないはずだし、あったら開けるたびにうるさくてしょうがない。ウチの声優兼エンジニアの服部綾子が、「もういいかげんこのドアは飽きたから、他のを探しているんだけど、いい音がないんですよぉ。」と騒いでいますが、無くて当たり前なんですわ。基本的に音がしないものなんですから・・・。じゃあ「ドアを開ける音」として使っている、この音はいったい何なのか? ということで、また次回。 |