だんだんサウンド技術から遠ざかっていく予感がするこのコーナー。今回も「技術」とは関係なさそうなお話ですが、誰かアイデアがあれば「ぜひ教えてください!」という意味も込めて書いてます。 レコーディングスタジオと銘打つ以上は、防音設備は欠かせません。必要な音以外は雑音となり、商品の品質を著しく低下させます。我がスタジオミラフトも、何らかの形で防音設備の導入を検討していますが、良い方法が見つからなくて困っています。もちろん、数百万円単位のお金をかけられれば何も問題はないのですが、個人事業レベルではなかなかそうもいきません。 それでは防音設備無しで仕事ができるのか?と不思議に思われるかもしれませんが、当スタジオのあるマンション街はかなり静かな環境にあるので、何とか仕事になっているわけです。しかし、外に車が来れば録音ストップ。飛行機が飛べばストップ。犬が鳴けばストップ・・・効率から考えるとあまりよくありません。大きな課題はどうやって効率化を図るかにあります。 防音への道のその1:部屋全体を防音 一番確実なのは部屋全体に防音工事を行ってしまうことです。業者を呼んで、見積取りましたよ。んで、そのままお帰りいただきました。 防音への道のその2:防音ユニット ヤマハやカワイ、その他いろいろな会社から、楽器練習用として防音ユニット(ボックスとも言う。)が発売されています。部屋の中に箱を置くという発想。 小規模スタジオではよく導入されています。しかしウチの特殊事情により悩み中。ちまたのスタジオは、単独のナレーション録音がほとんどなので、一人入れる小さいユニットがあれば済みます。ところがウチはオーディオドラマがあるので、最低3本のマイク(左・中央・右)が立てられなければなりません。3本のマイクで3人が同時に入れるユニットは巨大なものとなり、たぶんその重量で床が抜けるし、6畳の部屋をほとんど占領します。まあ、値段もすごいことになりますけど。 防音への道のその3:二重窓 最も簡単で低コストな方法は二重窓にすることです。図1をご覧ください。これがスタジオの窓。こいつを二重窓にすれば、一応問題は解決すると考えました。さっそく業者を呼んで、見積を取ったんですが、ここでさらなる問題が。 ウチは1階なので、この窓の外はすぐ地面になります。この地面がマンションの共有部分のため、クーラーの室外機を置いてはいけないのであります。すると今、取り付けてある窓用クーラーは外せない。この部屋は風通しが非常に悪く、クーラーが無かったら熱中症で倒れます。業者によると窓にクーラーがある限り、二重窓は付けられない。そうです。 防音への道のその4:子供対策 スタジオの窓の外は、すぐ公園になっています(図2)。ここで子供が遊び始めると、子供がいなくなるか、遊び疲れて静かになるまで録音をストップします。しかしお客様が立ち会いに来ている場合は、「じゃ、子供待ちで30分休憩しま~す。」なんて悠長なことは言ってられません。 時間的に追いつめられて、どうにもならなくなった時は声優の顔を見ます。できるだけ優しいおねーさん風の声優に頼んで、子供達の元へ派遣。お願いしてもらいます。「ごめんねぇ、いまねぇ、録音しているのぉ。ちょっとの間だけでいいから、静かにしててくれるぅ?」みたいな・・・。まあ、子供が怖がってしまうと、誘拐犯だと思われる危険性があるので、これはあくまでも最終手段なんですけどね。 しかしある日。ものすごく子供たちが騒いで録音ストップ。しかも終了時間に制限がある録音をしていた時、ついにキれた一人の声優が窓の前にすっくと仁王立ち。窓をがらっと開け、両手を腰に当てて、「静かにしてくれるかなー!」とやってしまいました。あああああ、わ、私の立場は・・・。地域住民との円滑なる人間関係は・・・。ここに住めなくなるぅぅぅぅ~~~! あの・・・何か妙案はないでしょうか・・・。 ということで、また次回。 さてその後どうなったのか・・・ 2007年8月。クーラーを外して二重サッシを導入しました。抜群のキキメ!ほとんど子供の声は聞こえません。仕事が非常に楽になりましたし、品質も効率も段違いに向上しました。ま、それはよかったんですがクーラーが無くなったので死ぬかと思いました。覚えてます?2007年の夏は猛暑だったんですよねぇ。試しにコロナ社の移動可能な「どこでもクーラー」ってのを買ってみたんですけど、部屋の温度が上昇するだけで全然冷えません。しょうがないのでとりあえず、防音を優先して冷房は後回し・・・ってことで、半分解決した状態です。ではでは。(2008.1.15) |
図1:これが問題の窓。窓の外は地面。その先には公園。
図2:子供たちが遊ぶ公園。この日は誰もいなくて静か。