歌える声優さんを教えてください というお問い合わせをいただくことがあります。 う・・・。中の人が悩んでます。 一応ナレーション声優スタジオの業務には歌唱は含まれていないんですよね。なのでちょっと悩むのです。でも絶対にやらないということではなくて、お客様のご要望があればお受けするようにしています。・・・と、なにやらものすごく歯切れが悪い感じですが、これには理由があります。 声優はボーカリストではない 大前提として「声優はボーカリストとは違う」ということがあります。声優だったら歌えると思われるのは間違いです。もちろん歌手としてコンサートを開くような人もいますが、誰もができるわけではありません。 誰でも歌えます。がしかし 極論を申し上げますと、「歌えますか?」と問われれば「誰でも歌えます」という答えになります。そりゃそうですよね。カラオケに行ってみんな歌ってますものね。では声優も全員が歌えるのか?そこで問題となるのは「求められるレベル」なのです。自分でお金を払って遊びで歌うのと、仕事でお金をもらって歌うのとでは全然話が違うのです。 キャラ声で歌う 最初からボーカリストとして問い合わせが来ることはほとんどありません。何かのキャラクターがあって、そのキャラクターが歌うというのがほとんどです。ですから声優へは地声ではなくキャラ声で歌うことが求められます。「ほとんど地声=キャラ声」の声優ならいいのですが、地声とは別にキャラ声を作って出している場合は難易度が増します。作り声ですから音域が狭くなることが多いんですよね。そうなると楽曲のキーが合わないということが起きるかもしれません。音域を確保し、キャラ声で歌い、キャラの個性も表現できる人は限られてしまいます。 歌唱レベル 中の人・・・運営側として、お客様にまず確認したいのは、「どういうレベルの歌唱力が必要ですか?」ということです。「キャラ声なら音程は外れていても大丈夫。後でDAWソフトで修正する。」ならOKです。「歌と言っても曲に合わせてセリフ的な歌詞を読む」ももちろんOKです。しかし「修正なしで使うので、音程を外さずに歌ってほしい。」ですと、対応できる声優は非常に限られてしまうと思います。 楽譜が読めないかも 先ほどもご説明しましたが、ほとんどの声優は音楽的な訓練を受けていません。演技とは別の知識なので楽譜を読める人は少数派です。「楽譜通りにきっちり歌ってほしい」というご要求は難しいと思われます。そのため収録現場では楽譜や音楽の専門用語を使った指示は対応できない(通じない)とお考えください。 まとめです お客様からの「歌える声優さんを教えてください」というお問い合わせに対して、はっきりしたお返事ができない理由がおわかりいただけましたでしょうか。 ナレーション声優スタジオは音声制作が主体なので、歌に関しては声優の実力を把握していません。歌えるかどうかは声優に自己申告してもらいますが、お客様のご要求にお応えできるかどうかは保証いたしかねます。また原音として歌を収録することは可能なのですが、その後の楽曲として編集したり音程合わせのなどの後処理は、音楽専門のスタジオに別途依頼していただくことになります。 ウチに登録している声優に「歌えますか?」と尋ねれば、「ぜひやりたいです」と非常に前向きな返事が数多く返ってきます。実際に歌の仕事の経験者もおります。事務局としても歌は声優がやりたい仕事の一つであることは十分承知していますので、オファーがあればぜひともお受けしたいのですが、果たして要求されている歌唱力とマッチングしているのかどうか。判断材料が乏しいだけに悩ましいところなのです。 おっと、最後はほとんど独り言になってしまいました。大変失礼いたしました!
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