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部分リテイクのやっかいさ

部分リテイクってなに?

収録したナレーションの一部を新しく収録した音声と入れ替えることです。部分リテイクが必要になる理由には、読みを間違っている、ノイズが入っている、原稿を変更する、などがあります。

ここの部分をこの原稿に変えたい

という感じで指示があります。スタジオ録音でお客様の立会いがあって、その場でリテイクするのであれば、あまり問題はありません。すぐ対応ができます。しかしやっかいなのは、収録が終わってしまってから、後日リテイクになった場合です。これ、収録から時間が空けば空くほど、やっかいさが増します。

やっかいなのは違和感

スタジオは同じ。マイクやその他の機材も同じ。設定も同じ。当然ナレーターも同じ人。なので、パッパッと録って、リテイク部分を切り貼りすれば終わり!になると思われるかもしれませんが、実際のところそう簡単にはいかないことが多いのです。それは時間が経つとナレーターのコンディションが変わってしまうからです。「プロなんだから同じにできるだろ!」と言われてしまえばそれまでですが、人間である以上、機械音声のように何度も全く同じ読みをすることは難しいのです。そのため差し替えたときに、「なんか違う」とか「ここは別のものをつないだな」と、違和感を覚えることがあるのです。このような状態は作品としてあまり良くありません。

なぜそのようなことが起きるのか

マイクとの距離・角度

マイクはだいたい同じ位置にセットしますが全く同じにはできません。またマイクに向かうナレーターの姿勢や椅子の高さなども微妙に変わるので、マイクと口との距離や角度がある程度変わってしまうことは避けられません。これらはほんのちょっと違うだけでかなり音質も音量も変わってしまいます。そうなると差し替えたときに違和感なくつながらなくなります。

ナレーターのコンディション

ナレーターのコンディションによる変化もあります。気温、気圧、天候、体調、気分、などが声に影響してしまうのです。いつ何時でも同じ声で読むことができるナレーターさんもいますが、ほとんどの方は微妙に違ってきます。比較するものがなければ普通はわからないのですが、差し替えだとその部分が目立ってしまうことがあります。


例えばこうなります(違和感のサンプル)

「今回は千葉県をご紹介致します。山と海に囲まれ、多くの海水浴場や、自然豊かなレジャースポットはもちろんのこと。五感をフルに使って楽しめる、とても魅力的なエリアです。」

※赤文字の部分を「緑豊かな癒しの空間はもちろんのこと。」に差し替えました。

差し替える前の元の状態
違和感を考慮せずに適当に読んで差し替えた場合

気が付かなければそれまでなのですが、一旦気になってしまうとかなり違和感があるのではないかと思います。


さてここからは

ナレーション声優スタジオのお話になるんですが、ここまでご説明したようにナレーションの一部を後から修正するというのは、もちろん可能ですけど結構手間がかかるのです。結局のところ実際の作業としては、「修正部分を読む→元の音源と差し替えてみる→異違和感があれば録り直す」を、最適なテイクが録れるまで繰り返すしかありません。

そこで私どもでは、該当部分だけを読み直して差し替えるのではなく、ある程度の範囲を広げて読み直すようにしています。

この一言を変更したいという修正であっても、修正がある文の頭から句点(。)までの1文を読み直してしまう。ある範囲に複数の修正箇所が散らばっているなら、ブロックで複数行または該当範囲を読み直してしまうのです。

何度も何度も読み直して合わせるよりもこの方が早いんですよね。しかも頭から差し替えておけば、少々録音状態が違っていても人間の耳はあまり認識しないようになってます。

ナレーション声優スタジオでは原稿の修正やお客様都合のリテイクは有償になります。前述したように修正は範囲を広げて読み直すため、修正箇所が多いと読み直す文字数も増えて修正料金が上がることがあります。できるだけ無駄な費用は避けた方が良いと思いますので、事前に原稿を十分に検討してから依頼されることをお勧めいたします。

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