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第017回『スタジオ用ヘッドフォン購入記』

ヘッドフォンを買いました・・・。「うりゃ!それがどないしたねん!」みたいな関西系の突っ込みはさておき、たかがヘッドフォン購入に思いもよらず悩むはめになったので、ちょっと語ってみることにします。

ウチのスタジオでは、声優がヘッドフォンをかぶって、自分の声をモニターしながら録音します。ですから基本的に声優の人数分だけ、ヘッドフォンが必要になるわけです。これまではSONYのやす~い、MDR-CD270を中心に揃えてきました。こいつがですね、長年の経年変化でイヤーパッドがぼろぼろになってしまったのであります。それも6本全部ほぼ同時に。

この機種はパッドの交換だけできるタイプだったので、サービスへ連絡したら「生産完了からかなりの年月が経っていて、パーツの在庫無ありません。」ということであっさり断られてしまい、しょうがないので購入を決意。

しかしスタジオで使うヘッドフォンというのは、オーディオ用と違って何でもいいってわけじゃないんですよ。業界で標準的に使われているのは、SONYのMDR-CD900STなんですが、一本15,000円ぐらいします。それ3本買ったら45,000円。6本全部替えたら90,000円。う~、個人事業のウチには難しい出費ですなあ。ということで、はるかなるヘッドフォン探しの旅に出発したのであります。

■完全密閉型であること
耳全体を覆ってしまう完全密閉型でないと、モニターの音がマイクへ回り込んでしまいます。ハウリングや妙な響きの原因になるので、完全密閉型という条件は必須。ところがこのタイプは、安価なヘッドフォンではなかなか見つかりません。音楽を聴くために設計されたヘッドフォンは、周囲の音もほどほどに聞こえた方が疲れないので、オープンエアータイプや半密閉型が主流です。

■片耳コードであること
イヤーユニットの両方からコードが出ているタイプもペケ。コードが胸のところに当たって、衣服とすれてカサカサとノイズを出すことがあります。

■ストレートコードで3メータ以上
DJ用のヘッドフォンは完全密閉型が多いのですが、スパイラルコードが使われていることが多くて、これまた選択肢から外れます。スタジオでモニターする場合は、ヘッドフォン端子から距離があるので、少なくとも3メーターは欲しいところ。またスパイラルコードだとかなり自重があって、立ったままで録音しているとヘッドフォンがずり落ちてきてしまいます。

■オートフィット機能はだめ
かぶれば自動的に頭のサイズにフィットする機能を持ったヘッドフォンも、百害あって一利無しです。そういうタイプにはバネが内蔵されていますので、頭を動かすとキュッキュッというノイズが発生します。自分でイヤーパッドの位置を調整できるタイプがベストです。

■イヤーパッドが交換可能
パッドは消耗品ですから当然です。接着剤で貼り付けられているタイプは、パッドが破れると使い捨てになって不経済です。

■コストパフォーマンス
エンジニアが録音や編集に使うヘッドフォンは一点豪華主義で購入できますが、声優が使うモニター用にはそんなにお金をかけられません。また、ウチの場合は声だけがきちんと聞こえればいいので、音質がどうのこうのよりも、コストパフォーマンスが高い・・・早い話が「そこそこ音が良くて安い」ことが重要です。

さて、以上の条件をクリアするヘッドフォンとは・・・。みなさんも、暇なときに探してみて下さい。結果は、ほとんど見つからない。・・・はずです。それだけスタジオモニター用の需要は少ないってことですね。(注・もちろん価格が高いのならありますよ。)

唯一見つかったのは、オーディオテクニカから今年(2003年)発売されたばかりの新製品ATH-M30でした。実売価格6,000円ぐらいで音もしっかりしていますし、掲記の条件を全てクリアします。この価格帯の製品で条件を満たすものは他にありません。

こうして購入したヘッドフォンですが、目の前で開封したばかりの新品を他人(声優)が使っていると、気になってじ~っと様子を見ちゃいますねぇ。

「コードがからまったままで使うな!」「こりゃ、無理にひっぱるな!」「あーもぉ、そーゆー片づけ方しちゃだめ!」「もっと丁寧に扱わんかい!」「んな、デカイ頭に着けるな。バネが伸びるだろが!(←明らかにムチャクチャ)」・・・と、言いたいところですが、お客様の手前もあって、「いいですよ~。」と笑顔で答える自分がそこにいるのでした。

う、貧乏性のストレスが・・・。

ということで、また次回。

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